「高気密高断熱の家は快適」と聞いて興味を持ったものの、デメリットが気になっている方も多いのではないでしょうか。メリットばかり聞かされると、かえって不安になるものです。
実際、高気密高断熱住宅にはデメリットもあります。ただし、すべてが同じ重さではありません。設計・施工段階で対策が必要なものもあれば、お施主さま自ら簡単に対処できるものもあります。
本稿では、日々家づくりに接している立場から、高気密高断熱住宅のデメリットを深刻度の順に整理し解説します。対策とその限界まで正直にお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
高気密高断熱住宅に住んでみて気づく6つのデメリットと対策
高気密高断熱住宅のデメリットとして語られる内容は多岐にわたりますが、大きく6つに整理できます。
ここでは、優先的に注意すべきものから順にご紹介します。
要注意のデメリット|設計・施工段階での対処が必要

まず知っておいていただきたいのが、入居してからでは修正が難しいデメリットです。以下の3つは、設計・施工の段階で確実に手を打っておく必要があります。
- 内部結露による構造の劣化・腐朽
- 換気不足による空気の停滞感・健康被害
- 夏場の熱気のこもり
ネット上では「高気密高断熱のデメリット」として、「内部結露・空気の停滞感・熱気のこもり」などが並列に語られがちです。しかし、私たちが現場で感じているのは少し違います。
これらは「高気密高断熱のデメリット」ではなく、その多くは「設計・施工の精度不足で起きる症状」です。つまり、性能のデメリットと施工品質の問題は、本来分けて考えるべきものなのです。
それぞれ、詳しく解説します。
▼内部結露による構造の劣化・腐朽
結露とは、湿気を含んだ空気が冷たいものに触れ、水滴を生じる現象です。夏場、冷えたコップのまわりに水滴が付くのも、この「結露」によるものです。
結論から言うと、高気密高断熱住宅では、目に見える結露は発生しにくいです。しかし、外から見えない「壁の内部」で結露が発生し、カビが繁殖したり木材が腐朽したりする場合があります。
その一因は、断熱材や防湿気密シートと呼ばれる建材の施工不良です。また、通気層や防湿層の設計が不適切な場合にも起こり得ます。
つまり、内部結露は「高気密高断熱だから起きる」というよりも、設計・施工の精度が不十分な場合に起きる問題と言えます。
壁の内部は簡単に目視できないため、結露が発覚したときには構造材が傷んでいるケースもあります。6つのデメリットの中でも、とくに警戒すべきです。
この問題を防ぐためにお施主さま(建築主)におこなっていただきたいのは、「品質にこだわっている建築会社を選ぶ」ことと「ときどき工事現場を訪問して、よい意味で現場の緊張感を高める」ことです。
なお、どれだけ丁寧に施工しても、建材は経年により劣化します。そのため、定期的な点検が欠かせません。建築会社を選ぶ際は、アフターメンテナンス体制もしっかり確認しておきましょう。
▼換気不足による空気の停滞感・健康被害
気密性が高い家では、意図的に換気しなければ室内の空気を入れ替えることができません。
換気計画がうまく機能していないと、ハウスダストやCO2が室内にたまり、アレルギー症状を悪化させる要因になることがあります。結露やカビの繁殖につながる場合もあるでしょう。
「息苦しい」「なんとなく気持ち悪い」という声の多くは、高気密高断熱そのものの問題ではなく、換気計画の不備によるものです。
関連:高気密高断熱住宅は気持ち悪い?不快に感じる理由と失敗を防ぐ対策
なお、換気システムのフィルターは定期的な清掃・交換が必要です。これを怠ると換気性能が落ち、空気のよどみが発生するため、お施主さまによるメンテナンスも欠かせません。
▼夏場の熱気のこもり
断熱性能の高い家では、夏の日差しによる熱が室内に入ると、熱気がこもってしまいます。「高気密高断熱なのに暑い」と感じるケースの多くは、日射遮蔽の不十分さが一因です。
じつは、私たちの経験上、夏の暑さ問題は「断熱の性能が高すぎるから」ではなく「窓の設計に意識が回っていないから」起きる場合が少なくありません。断熱と遮熱を分けて考えてみてください。
たとえば、南面の軒や庇を深くする、遮熱性能の高い窓ガラスを採用するといった設計上の工夫で改善可能です。サーキュレーターや高窓を活用して空気を循環させる方法も効果的です。
ただし、西日が強い立地など、設計だけでは完全に防ぎきれないケースもあります。カーテンや外付けシェードなど、入居後の工夫も視野に入れておきましょう。
知っていれば対処可能なデメリット|お施主さまの工夫が欠かせない

次にご紹介する3つは、設計・施工の工夫だけではどうしても解消しきれないデメリットです。一方で、ある程度はお施主さま自ら対処していただけるデメリットでもあります。
- 初期の建築コストが上がる
- 冬場の室内乾燥
- 燃焼系の暖房器具が使えない
それぞれ、詳しく解説します。
▼初期の建築コストが上がる
高気密高断熱住宅は、高性能な断熱材やサッシ、気密施工の手間がかかるため、一般的な住宅に比べて建築費が高くなりがちです。
一方で、冷暖房効率がよくなるため光熱費は抑えやすくなります。また、室温が安定することでヒートショックなどの健康リスクが減り、医療費の低減も期待できます。
初期費用は高くなりますが、長期的に光熱費や医療費を下げたい方は高気密高断熱を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、高気密高断熱住宅が一定の省エネ水準を満たす場合、補助金や減税制度を活用できる場合があります。制度の内容や条件は年度によって変わるため、最新情報を確認しましょう。
参考:国土交通省「支援事業」
▼冬場の室内乾燥
きっちり施工された高気密高断熱住宅は、外気の湿気が入りにくいため、冬場に暖房を使うと室内の湿度がかなり下がります。肌の乾燥や喉の痛みを感じる方もいるかもしれません。
加湿器の使用や調湿効果のある建材、湿気を再利用できる「全熱交換型」の換気システムを取り入れることで緩和できますが、冬場の乾燥を完全に防ぐのは難しいのが実情です。
ただし、実際に住んでいる方からは「冬場に洗濯物がよく乾く」「ダニやカビが繁殖しにくい」といった声も聞こえてきます。
乾燥は「悪いことしかない現象」ではなく、見方を変えれば「高気密住宅ならではの特長」とも言えるでしょう。
▼燃焼系・室内排気の暖房器具が使えない
室内に排気を出すタイプの石油ストーブやガスファンヒーターは、高気密住宅では一酸化炭素中毒のリスクが高まるため、多くの建築会社が使用を推奨していません。
ただし、高性能な高気密高断熱住宅であれば、多くの地域ではエアコンだけで暖かく過ごせるでしょう。エアコンが苦手な方には、床暖房や蓄熱暖房という選択肢もあります。
後悔しないために、ハウスメーカーや工務店に聞いてほしいこと

デメリットと対策を理解したうえで、次のステップとして大切なのは「どの建築会社に依頼するか」です。
対策の大半は、建築会社の設計力と施工精度に依存するものです。つまり、デメリットを知ること以上に、デメリットを防げる会社を選ぶことが非常に大切です。
以下の3つの質問は、建築会社の品質やサポート体制を見極めるうえで役立ちます。打ち合わせの際にぜひ聞いてみてください。
気密(C値)測定を実施しているか
C値とは、建物の面積に対してどれだけの隙間があるかを示す数値で、小さいほど気密性が高いことを意味します。重要なのは、あなたが住む家を測定してもらえるかどうかです。
モデルハウスだけ測定している会社もあれば、オプション(希望者のみ有料)で測定している会社もあるため、「自分の家を測定してもらえるか」を確認してください。
なお、気密性能の実測値の開示は、施工品質に対する自信の表れでもあります。建築会社選びの判断基準のひとつになるでしょう。
関連:本当にC値は意味ない?住宅が備えるべき「気密性能」の考え方
換気システムのメンテナンス方法を丁寧に教えてくれるか
換気フィルターの清掃や交換は、基本的にお施主さまご自身でおこなう作業です。ただし、フィルターの種類や交換頻度、清掃の手順は換気システムによって異なります。
引き渡し時にメンテナンス方法をしっかり説明してくれるか、分からなくなったときに相談できる体制があるか――この点を確認しておくと、入居後の安心感が違います。
見学会やモデルハウスで実際の「住み心地」を体感できるか
カタログの数値だけでは、実際の空気感や温度感が分かりません。
可能であれば、真夏や真冬の時期にモデルハウスや完成見学会に足を運び、室内の温度・湿度・空気の流れを体で感じてみてください。
「数値の上では高性能」と「住んでみて本当に快適」は、必ずしも同じではありません。
まとめ:高気密高断熱住宅のデメリットは数ではなく深刻度で判断
高気密高断熱住宅の主なデメリットを6つご紹介しました。設計・施工段階で防ぐべきものと、お施主さまの工夫で対処できるものに分かれますので、深刻度に応じて解決の優先順位をつけましょう。
信頼できる施工会社を選ぶことも重要です。施工精度とC値測定の有無、入居後のサポート、住み心地を実体験できるかどうか――この4点を確認するだけでも、後悔のリスクは大きく減らせます。
この記事が、高気密高断熱住宅を検討されている方の判断材料になれば幸いです。