高気密高断熱住宅は、快適性や省エネ性能に優れた住まいとして注目されています。一方で「気持ち悪い」「息苦しい」といった声を聞き、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
じつは、不快感の原因はひとつではなく、換気や窓の設計、住み方など、いくつかの要素が重なっているケースがほとんどです。原因を把握して対策すれば、ストレスの大部分は解消できるでしょう。
本稿では、不快に感じる原因を症状別に整理したうえで、失敗を防ぐための具体的な対策をご紹介します。あなたも、本稿を参考に理想の高気密高断熱住宅を建ててみませんか?
高気密高断熱住宅で「気持ち悪い」と感じるときの症状タイプ

高気密高断熱住宅への不快感には、いくつかの「パターン」があります。どんな場面でどんな不快感が起きるのかを知っておくことで、家づくりの計画段階から対策を盛り込めます。
それでは、代表的な4つのタイプをご紹介しましょう。
喉や肌がピリピリ・イガイガする
高気密高断熱住宅では、喉や肌がピリピリ・イガイガするといった声が聞かれます。これは、室内の空気が乾燥しすぎているサインです。
とくに冬場の高気密高断熱住宅は、室内が乾燥しやすくなります。エアコンを使うとさらに乾燥が進み、湿度40%を切るような環境では、肌や喉の粘膜が刺激を受けやすくなります。
一方で、湿度が60%を上回るとカビやダニが増えるリスクが高くなります。高気密高断熱住宅に限らず、家の中の湿度は40~60%の範囲に収まるようコントロールすることが大切です。
参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構「建物の高断熱化と室内湿度制御について」
息苦しさ・カビ臭さ・目まいを感じることがある
高気密高断熱住宅では、息苦しさやカビ臭さ、目まいを訴える声も聞かれます。その主な原因としては、換気システムがちゃんと機能していないことが考えられます。
▼設計・施工の不備による換気不足
住宅には、法律で「24時間換気システム」の設置が義務付けられています。
しかし、換気の設計や施工が不十分だと、空気の流れが滞り、人によっては息苦しさを感じる場合があるようです。
▼換気不足が招くシックハウス症候群のリスク
また、換気がうまく機能していないと、家具に使われている接着剤などから揮発する化学物質が室内に充満しやすくなります。
これが「シックハウス症候群」と呼ばれる健康障害につながることがあり、目や喉の刺激、頭痛、目まい、吐き気などの症状を引き起こす場合があります。
こうしたリスクを避けるには、換気計画がしっかり設計されているかを事前に確認することが重要です。
建築会社に換気方式の種類や計画の根拠を説明してもらい、納得できるまで質問するようにしましょう。
無音すぎ、または音が響きすぎて不気味さを感じる
「静かすぎて落ち着かない」「音が反響して気になる」という声も、高気密高断熱住宅ではよく聞かれます。
高気密高断熱住宅は防音性能を高めやすく、室内が比較的静かになる傾向があり、静寂を好む方には快適でしょう。一方で「音がないと不安」と感じる方にはストレスになることも。
また、使用する断熱材や内装材の組み合わせによっては、室内で音が反響しやすくなる場合もあります。
事前に完成見学会や宿泊体験で実際の音環境を体感しておくと、入居後のギャップを減らせます。音の好みは、個人差が大きいため、遠慮なく建築会社に伝えることが大切です。
外とのつながりが断絶されたような閉そく感を覚える
閉じ込められているような閉そく感は、窓の数や面積の不足が原因である可能性があります。
▼なぜ閉そく感が生まれるのか
高気密高断熱住宅では、断熱性能を確保するために窓の数を減らしたり、小さめの窓を採用したりするケースがあります。なぜなら、熱の流出入は窓がもっとも多いからです。
しかし、窓を減らしたり小さくしたりすると、外の景色や自然光を感じ取りにくくなり、閉じ込められたような感覚を覚える方もいます。
▼設計段階でできる閉そく感対策
断熱性能の数値ばかりに目が向くと、窓からの眺めや太陽光の取り込みが後回しになりがちです。しかし、眺望や採光は設計の工夫次第で断熱性と両立できます。
たとえば、高断熱サッシや複層ガラスを採用すれば、大きな窓でも断熱性を確保できます。「省エネ=窓を減らす」という単純な発想に偏らないよう、建築会社と丁寧にすり合わせておきましょう。
高性能なのに「不快な家」になってしまう主な理由と対策

高気密高断熱住宅に不快感が生まれるのは、性能そのものに問題があるわけではなく、設計・施工・運用のどこかに問題があることが少なくありません。
不快な家になってしまう主な4つの理由と、それぞれの対策を見ていきましょう。
1:湿度調整ができていない(40~60%が理想)
室内の快適さを左右する大きな要因のひとつが、湿度管理です。
人が快適に過ごせる湿度は40~60%とされていますが、高気密高断熱住宅は過乾燥になりやすい傾向があります。
▼高気密高断熱住宅で湿度管理が重要な理由
高気密高断熱住宅は外気をシャットアウトする構造上、冬は乾燥しやすくなります。一方、梅雨から夏は外気の影響を受け、冷房をかけていないと室内がジメジメするでしょう。
そのため、湿度のコントロールを怠ると、乾燥による体調不良や湿気によるカビ・ダニの発生につながります。
▼湿度を40~60%に保つ具体的な対策
対策は難しくありません。まずは、湿度計を設置して、室内の湿度を「見える化」することから始めましょう。
冬場は加湿器を適切に使い、夏場はエアコンの冷房や除湿機能を活用して湿度をコントロールしてください。内装材に調湿機能があるものを使うのも、ひとつの方法です。
2:24時間換気システムがうまく機能していない
換気システムは、高気密高断熱住宅の「肺」とも言える設備です。これが正常に機能しないと、室内の空気がどんどん悪くなります。
▼換気が機能しない主な原因
換気が不十分になる原因は大きく2つあります。ひとつは設計上の換気計画のミス、もうひとつは施工段階の気密不足です。気密性が低いと、計画どおりに空気が流れません。
設計と施工の品質は、最終的には建築会社の力量に左右されます。そのため、24時間換気システムがうまく機能するかどうかは「建築会社選びにかかっている」と言っていいでしょう。
▼気密測定をおこなう会社を選ぶ重要性
建築会社を選ぶ際は、「気密測定 (C値の測定)」を実施しているか確認しましょう。
気密測定とは、実際に施工した住宅の気密性能を数値で確認する検査です。この測定をおこなっている会社は、施工品質をチェックする姿勢があると言えます。
関連:本当にC値は意味ない?住宅が備えるべき「気密性能」の考え方
3:建材の防音能力をうまく調整できていない
「静かすぎる」または「音が響く」という問題は、断熱材や内装材の選択と深く関わっています。
▼吸音と反射のバランスが静けさを決める
断熱材にはさまざまな種類があり、それぞれ吸音性能が異なります。吸音性が高すぎると音が消えすぎて不気味に感じることがあり、低すぎると外や中の音が筒抜けになりかねません。
内装材は、音の反響に影響します。カーペットや畳などは比較的吸音してくれますが、硬いフローリングや、コンクリートむき出しの壁は室内の音を反射します。
▼家族に合った音環境を設計する
「ちょうど良い静けさ」は、人によって異なります。音環境の好みを事前に建築会社へ伝え、断熱材の種類や内装仕上げを調整できないか確認してみてください。
見学会で実際の音の感じ方を体験するのも有効な方法です。カタログや数値だけではわからない「音の心地よさ」は、現地で体感してこそ判断できます。
4:眺望や太陽の光を確保できる窓が少ない
断熱性能を重視するあまり、窓を減らしすぎると、暮らしの豊かさが損なわれてしまいます。
窓は熱の出入りが多い部位であるため、断熱を意識すると窓を小さく・少なくしがちです。しかし、自然光や外の緑が見えるかどうかは、日々の気分や健康感に大きく影響するでしょう。
断熱性能の高い複層ガラスや高断熱サッシを採用すれば、大きな窓でも断熱性を確保できます。省エネのために窓を減らすのではなく、採光・眺望・断熱を三位一体で考える設計を依頼しましょう。
後悔しないために!「気持ち悪い」をなくすための3つのポイント

高気密高断熱住宅を建てて後悔しないために、計画段階から意識しておきたいポイントが3つあります。いずれも知っておくことでリスク回避につながりますので、ご紹介しましょう。
1.「高気密=息苦しい」という先入観をなくす
「高気密=息苦しい」というイメージは、必ずしも正しくありません。そのイメージ自体が、先入観である可能性を疑ってみてください。
▼気密性の高さと息苦しさは別問題
じつは、一般的な鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは、高気密の一戸建てと同程度、あるいはそれ以上に気密性が高い傾向にあります。
しかし、マンション暮らしの方で「毎日息苦しい」と感じている方はほとんどいないはずです。「高気密=息苦しい」という感覚は、イメージから来ていることが往々にしてあります。
▼適切な設計をおこなえば息苦しくならない
正しい換気設計と施工がおこなわれた高気密高断熱住宅であれば、2時間を目安に部屋中の空気が入れ替わります (参考:建築基準法施行令 第20条の8)。
さらに設計段階で防音や眺望にも配慮されていれば、不快感は出にくくなるでしょう。高気密に不安を感じたときは、まず「それは先入観かもしれない」と一度立ち止まって考えてみてください。
2.依頼したい建築会社が建てた家を必ず見学する
どれだけ説明を聞いても、実際に体感してみなければわからないことがあります。「百聞は一見にしかず」です。
▼同じ高気密高断熱でも体感は大きく異なる
高気密高断熱住宅の快適さは、建築会社ごとに差があります。なぜなら、建築会社ごとに設計思想や施工精度が異なるからです。
見学会や宿泊体験会があれば、できるだけ参加しましょう。空気の入れ替わりや音の響き、窓からの景色や光の入り方を、五感で確かめてください。
▼小さな違和感を見逃さない
見学中に「なんとなく違和感がある」と感じたら、その感覚を大切にしましょう。その場で担当者に質問し、丁寧に答えてもらえるか、信頼できる対応かどうかを見極めることが重要です。
疑問を流されたり曖昧な返答をされたりするなど、不安が残る場合は他社も含めて比較検討すると安心です。
3.施工実績が豊富な建築会社を選ぶ
高気密高断熱住宅の品質は、「設計力」と「施工力」の両方が揃って初めて発揮されます。気密性や断熱性は、設計図どおりに丁寧に施工されてこそ意味を持つのです。
しかし経験の浅い会社では、理想の数値が出なかったり、換気計画がうまく機能しなかったりするリスクがあります。
一方で施工実績が豊富な会社であれば、施工のコツやトラブルのパターンを熟知しており、未然に防ぐノウハウを持っています。
口コミや施工事例の数と内容を確認し、「この会社に任せて大丈夫か」を慎重に見極めましょう。気密測定の実施や、完成後のアフターフォロー体制なども、判断材料のひとつになります。
まとめ:高気密高断熱住宅の「気持ち悪い」はある程度改善できる
高気密高断熱住宅の「気持ち悪い」という不快感は、多くの場合、乾燥・換気不足・音環境・採光の問題が原因です。これらは、適切な設計・施工・運用によって対策できます。
「高気密高断熱=不快」ではなく、「対策なしの高気密高断熱=不快になるリスクがある」と理解しておくことが大切です。
住まいづくりを成功させるためには、実績と誠実さを兼ね備えた建築会社と、しっかりとしたコミュニケーションを取りながら進めることが何より重要です。
