本当にC値は意味ない?住宅が備えるべき「気密性能」の考え方

本当にC値は意味ない?住宅が備えるべき「気密性能」の考え方

家の省エネ性能を測る指標のひとつに「C値」があります。一方で家づくりの相談中に、ハウスメーカーの営業担当者から「C値を測っても意味ないですよ」と言われて戸惑ったことはありませんか?

「結局、どちらを信じればいいの?」と不安になりますよね……。結論から言うと、C値は意味のない数字ではありません。ただし、用い方には注意点もあります。

本稿では、「C値は意味ない」と言われる理由を整理し、住宅が備えるべき気密性能の考え方を分かりやすく解説します。省エネ住宅に関心がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

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なぜ「C値は意味ない」と言われる?

なぜ「C値は意味ない」と言われる?

「C値(家の気密性能を表す指標)は意味ない」という意見には、感情的な否定だけでなく、それなりの背景や理由があります。

ここでは、よく聞かれる代表的な4つの理由を取り上げ、それぞれがどこまで正しいのかを整理していきます。

日本の夏は高温多湿だから「風通しのいい家」がよい?

「風通しのよい家が日本には合っている」という考え方は、誰でも納得しやすいものです。ただし、その前提条件を現代の住宅にそのまま当てはめることはできません。

鎌倉時代の随筆『徒然草』の中で、吉田兼好は「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」⸺ つまり「家は夏を基準につくるべきだ」と記しています。

参考:国立研究開発法人 建築研究所「季節と住まい/夏をむねとすべし?」

当時の日本では、冬より夏の疾病死者数が多く、暑さをいかにしのぐかが課題のひとつだったようです。そのため住宅は、自然に換気できる構造が重視されていたと考えられます。

一方で現代の住宅は状況が大きく異なり、高断熱で、冷房や機械換気の使用を前提に設計されています。疾病死者数も、冬季のほうが多くなっているようです。

参考:厚生労働省「死亡月別にみた心疾患-脳血管疾患死亡」

今の住宅環境では、隙間が多い家は意図しない空気の出入りが生じ、冷房が効きにくくなってしまう恐れがあります。

昔ながらの住まいの知恵を否定する必要はありません。しかし、現代の家づくりでは「隙間の量」にも目を向けてみてください。

家の「快適さ」はC値だけで決まらない?

家の快適さは、C値だけで決まるものではありません。気密は住宅性能のひとつとして大切ですが、他の性能と組み合わさって初めて効果を発揮します。

たとえば、C値がよくても断熱材の性能が低ければ、やはり冷暖房の効きが悪くなります。また窓の性能や配置、サイズによっても、室内の温度環境は大きく変わるでしょう。

C値は「隙間の量」を示す指標であり、快適さそのものを表しているわけではありません。C値を見るときは、断熱性能とセットで確認してみましょう。

過剰に「低C値」を追求するのはコスパが悪い?

過剰に低いC値を求めると、費用に対して得られる効果が小さくなる場合があります。そのため、家づくりで「C値を下げること」自体を目的にするのは、おすすめできません。

C値は、下げようとすればするほど、施工の手間や難易度が高くなります。その結果、コストは増える一方で、住み心地や省エネ性能の改善は「ある水準を超えると体感しにくくなる」ことがあります。

ここで大切なのは、低C値は「意味がない」わけではないという点です。問題なのは、「なぜ、そのレベルの気密性能が必要なのか」を考えないまま、数値だけを求めてしまうケースです。

必要とされる気密性能は、その家で暮らすご家族の価値観によって変わります。暮らし方や予算に合っているか、という視点で考えてみてください。

2009年の省エネ法改正でC値の基準が削除されている?

2009年の省エネ法改正以降、国の省エネ基準では、C値は数値基準として明示されなくなりました。ZEHなどの省エネ住宅の要件にも、原則としてC値は含まれていません。

しかし、これは「C値が不要になった」という意味ではありません。C値が「設計」ではなく「現場の施工」で決まる数値であるため、一律にC値で格付けするのが難しいからだと考えられます。

一方で住宅建築の現場では、施工精度の確認や品質管理の一環として、今でも気密測定を実施している会社が少なくありません。

なお、気密性能については、建築業界では目安として次のように表現されることが多いです (※公的な認定区分ではありません)。

  • C値2.0以下:気密住宅
  • C値1.0以下:高気密住宅
  • C値0.5以下:超高気密住宅

建てている家のC値を確認することで、その建築会社が気密性能をどう捉えているか見えてくることがあります。

公的な基準の有無だけで判断せず、建築会社が気密性能をどのように考え、どのように家づくりに生かしているのかを確かめてみましょう。

C値(相当隙間面積)とは

C値(相当隙間面積)とは

ここまで、「C値は意味ない」と言われる理由を見てきました。では、そもそもC値とは何を表す数値なのでしょうか。

ここからは、専門用語をできるだけ使わずに、C値の基本をお伝えします。10分で理解できる基本知識が、何十年も快適に暮らせる家づくりのカギになります。

C値の定義

C値とは、正式には「相当隙間面積」と言い、住宅にどれくらいの「隙間」があるかを表す指標です。

C値は、家全体にある隙間を合計し、床面積で割って算出します。したがって、C値が小さいほど隙間が少なく、気密性が高い住宅だと言えます。

C値[cm²/m²] = 住宅全体の隙間面積の合計[cm²] ÷ 延床面積[m²]

ここで大切なのは、C値が示しているのは断熱性能や快適さそのものではないという点です。あくまで、「どれだけ隙間が少ないか」を表すひとつの目安にすぎません。

C値を見るときは、この点を忘れずに、他の性能値と合わせて総合的に判断することが大切です。

C値が上がる要因

C値は、設計以上に「現場の施工精度」によって左右されやすい数値です。

窓のまわりや床を貫通する配管のまわりなど、住宅には隙間が生じやすいポイントがいくつもあります。こうした部分をどれだけ丁寧に処理できるかで、C値は大きく変わります。

なおC値は延床面積で割って算出されるため、同じような隙間量でも、床面積が大きい住宅ほど数値が小さく出やすいという特性があります。

そのため、数値の大小だけでなく、施工会社の気密施工に対する姿勢や実績を確認することも大切です。

住宅が備えるべき「気密性能」の考え方

住宅に必要な気密性能は、そこに住むご家族の価値観や暮らし方、そして家の構造によって変わります。すべての住宅が、「C値は1.0以下にしなければならない」というわけではありません。

たとえば、軽量鉄骨造は気密を取りにくいため、C値が下がりにくい傾向があります。一方で強度が高く、粘り強いという特性があり、耐震性を優先したいご家庭には魅力的な構造でしょう。

大切なのは、その家の性能全体がどんな考え方で設計されているかです。ご家族で要望を出し合い、C値の優先順位を考えてみてください。

気密測定が大切な理由

C値は、専用の気密測定機を使って測定します。この測定は、住宅の省エネ性能を確認するための大切な工程です。

図面どおりに施工したつもりでも、実際の仕上がりは施工精度で差が出ます。気密測定をおこなうことで、目標どおりの性能が確保できているかを客観的に確認できます。

ですから気密測定は、数値を誇るためではなく、施工精度をチェックするための行為です。この測定と結果は、「完成後に見えなくなる部分の品質」を測る指標のひとつになります。

建築会社を選ぶとき、判断材料のひとつとして、気密測定の有無や結果の活用方法にも注目してみてください。

C値が高い(気密性能が低い)と住宅はどうなる?

C値が高い(気密性能が低い)と住宅はどうなる?

C値が高い・低いだけでは、住宅の良し悪しは決まりません。ただし、気密性能が十分でない場合に起こりやすいトラブルはあります。

ここでは、C値が高い場合に考えられる影響をご紹介します。「必ずそうなる」ではなく、「起こることがある」という前提でご覧ください。

省エネ効果が薄れ、暑さ・寒さを感じやすくなることがある

C値が高い住宅では、冷暖房の効きが安定しにくく、暑さや寒さを感じやすくなることがあります。

住宅に隙間が多いと、せっかく冷やした空気や暖めた空気が外へ逃げやすくなります。その結果、エアコンをつけていても室温が安定しにくく、光熱費がかさむ原因になることがあります。

ただし、これはC値だけの問題ではなく、断熱性能とも深く関係しています。省エネ性能を考えるときは、C値と断熱性(断熱等級やUA値など)をセットで確認してみましょう。

計画的に換気できなくなり、空気のリフレッシュが難しくなる

現代の住宅は、換気扇や給気口を使って、空気の流れを計画的につくる設計になっています。しかし、気密性能が低いと、換気計画が意図どおりに機能しにくくなることがあります。

なぜなら、隙間が多いと想定していない場所から空気が出入りし、換気の流れが乱れてしまうからです。その結果、空気がうまく入れ替わらず、よどんでしまうケースもあります。

計画換気は「どこから空気を取り入れ、どこから抜くか」だけでなく、家の気密性も大切です。適切な換気をおこなう視点からも、C値を確認してみてください。

空気がよどむと、結露やカビが発生し、建物が傷むことも

気密性能が十分でないと、壁の中で結露やカビが発生しやすくなることがあるため注意が必要です。

冬の暖かいお部屋の空気は、たくさんの水分(水蒸気)を抱えています。この空気が「外気で冷やされた外壁の中」に入り込んでしまうと、温度差によって結露が発生します。

窓ガラスに付く結露なら拭き取れますが、壁の中の結露は見えません。そのため放置され、カビや木材腐朽菌の発生を招きやすくなります

また、グラスウールなどの繊維系断熱材は、結露でぬれた状態が続くと本来の保温能力を発揮しにくくなります。そんなことにならないためにも、しっかりとした気密処理が必要です。

こんな人はC値をチェックしよう

こんな人はC値をチェックしよう

C値は、すべての人にとって必須の数値というわけではありません。

ただし、家づくりの考え方や重視したいポイントによっては、数値を知っておくことで判断がしやすくなる指標でもあります。

ここでは、C値をチェックしておくと納得感につながりやすい人の特徴をご紹介します。

客観的な数字でマイホームの性能を理解したい人

C値は、「目に見えない隙間の量」を数値として確認できる数少ない指標のひとつです。感覚やイメージだけでなく、客観的な数字で住宅性能を把握したい人にとって、C値は参考になります。

家の快適さは、住んでみないと分からない部分も多いものです。しかし、C値などの数値を見れば、ある程度の性能レベルを予測し、判断することができます

建築会社を選ぶとき、「何となくよさそう」ではなく「こういう理由で安心できる」と納得したい方は、C値を確認してみてください。

きちんと性能の説明をしてくれる建築会社を探している人

C値への向き合い方を見ることで、その建築会社の姿勢が見えてくることがあります。

C値をアピールする会社もあれば、数値を出さない会社もあります。その理由を聞くことは、施工の考え方や、顧客への説明姿勢を見極めるよい方法です。

C値について質問したとき、納得できる言葉で説明してもらえるかどうかを、会社選びの参考にしてみてください。

まとめ:C値がすべてではないが、無視してはいけないもの

C値そのものは、住宅の快適さや性能を示す指標ではありません。しかし、測定する意味のない数字でもありません。

C値は、「家の隙間」という目に見えない部分を客観的に捉えるための指標です。断熱や換気などと組み合わせて確認することで、その家の快適さが見えてきます。

また、C値の扱い方を確認することで、建築会社の省エネに対する考え方もチェックできます。住宅会社の設計思想や、家づくりへの姿勢を確認できるでしょう。

とはいえ、目標にすべきC値は住む人の価値観によって変わります。C値も含めた複数の指標を参考にしながら、納得できる家づくりを進めてください。

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