「フェノールフォームって、本当にそんなにいいの?」「他の断熱材との違いがよくわからない」⸺ 住宅の断熱材選びでそんな疑問を抱えている方が少なくありません。
断熱材は、住まいの快適性や省エネ性に直結する大切な建築材料です。「フェノールフォームが優秀」と聞くものの、「デメリットはないのか?」「寿命はどうか?」と悩みが尽きないですよね。
そこで本稿では、フェノールフォームの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。断熱材選びで後悔しないために、フェノールフォームの知識を深めてみませんか?
》埼玉県でフェノールフォーム断熱の家を新築するなら「家はシェルッソ」へ
フェノールフォームとは
まずは、フェノールフォームの特徴や主な利用方法、そして代表的な製品について解説します。
「そもそも、フェノールフォームって何?」という方は、まずは基礎知識から理解を深めておきましょう。メリット・デメリットを理解しやすくなりますよ。
フェノールフォームの特徴
断熱材は、大別すると《繊維系》と《プラスチック(発泡樹脂)系》に分けられます。
フェノールフォーム断熱材は、プラスチック系の断熱材の一種です。フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を混ぜて発泡させ、板状に成形してつくります。
繊維系 |
・グラスウール ・ロックウール ・セルローズファイバー ・インシュレーションファイバー など |
---|---|
発泡樹脂系 |
・ポリスチレンフォーム ・硬質ウレタンフォーム ・フェノールフォーム など |
フェノールフォームは、断熱材の中でもトップクラスの断熱性能を持っています。熱の伝えにくさを示す熱伝導率はおおよそ「0.020W/m・K」と非常に低くいです (値が低いほど断熱性が高い)。
フェノールフォームで家の断熱性を高めると、少ないエネルギーで快適な温度を維持しやすくなります。その結果、今までよりも電気代を気にせずに冷暖房を利用できるようになります。
たとえば冬の朝、「布団から出るのがイヤだ」と感じたことはないでしょうか?高断熱の家なら朝から家の中が暖かく、快適に目覚められ、一日のスタートに《ゆとり》が生まれます。
また、同じ断熱性能を得たい場合、一般的な断熱材よりも薄くできます。フェノールフォームを活用すれば、屋根や外壁の厚みを抑えながら《省エネ住宅》を実現できます。
主な利用方法(外張り断熱に適している)
フェノールフォームは、住宅の《外張り断熱工法》で多用されています。
従来の住宅では、家の構造体(床、壁、屋根など)の内部にグラスウールなどの繊維系断熱材を充填する《充填断熱》が主流でした。
しかし、近年では断熱や省エネへの関心の高まりから、外張り断熱や「充填断熱+外張り断熱」のダブル断熱が注目されています。
外張り断熱は、構造体をまるごと断熱材で包みこむ断熱工法です。人の体に例えると、充填断熱が《皮下脂肪》、外張り断熱が《服》にあたります。
充填断熱は、隙間やムラができると効果を発揮できません。外張り断熱は隙間やムラを生じにくく、充填断熱より高断熱な住宅を実現しやすい工法です。
また、先述のとおりフェノールフォームは他の断熱材に比べて断熱性能が高く、薄い厚みでも効果を発揮できます。外壁に施工しても壁の厚みを抑えられるため、外張り断熱に適しています。
主なフェノールフォーム製品
フェノールフォーム断熱材には、どのような製品があるのでしょうか?
現在、フェノールフォーム断熱材の代表的な製品(住宅向け)として以下のふたつがあります。
- ネオマフォーム(旭化成建材)
- フェノバボード(フクビ化学工業)
それぞれの特徴を、簡単に解説しておきましょう。
▼ネオマフォーム(旭化成建材)
ネオマフォームは、《旭化成》が製造・販売する高性能フェノールフォーム断熱板です。高い断熱性能(熱伝導率0.020W/m・K)と難燃性を兼ね備えています。
厚みやサイズのバリエーションが豊富で、住宅の床・壁・屋根など幅広い用途向けに展開されています。
さらに、性能を高めた上位製品として「ネオマゼウス」や、不燃材料認定を受けた「ネオマフォームF」などのラインナップもあります。
▼フェノバボード(フクビ化学工業)
フェノバボードは、元々《積水化学》が開発・販売していたフェノールフォーム断熱材です。2019年に事業譲渡され、現在は《フクビ化学工業》から販売されています。
フェノバボードも業界最高クラスの断熱性能(熱伝導率0.019W/m・K)を誇ります。標準品のほか、遮熱タイプや高密度品、充填断熱用の低コスト品など用途に応じた製品を展開しています。
日本の一般住宅向けとしては、既出の旭化成・ネオマフォームと、このフクビ化学・フェノバボードが二大製品と言ってよいでしょう。
フェノールフォームのデメリット
フェノールフォームには、断熱材として優秀な反面、覚えておきたいデメリットもあります。代表的なものを3つご紹介しましょう。
- 他の断熱材に比べて価格が高め
- 人工樹脂であるため紫外線や物理的衝撃に弱い
- シロアリの食害に遭う恐れがある
長所だけでなく、短所も知っておくことで、より自分に合った選択ができます。デメリットについて詳しく解説しますので、把握しておきましょう。
他の断熱材に比べて価格が高め
フェノールフォーム最大のデメリットは、コストでしょう。他の断熱材に比べて、価格が高額な部類に入ります。
たとえば、一般的なグラスウール断熱材と比較すると、おおよそ2~3倍程度の価格差があります。だたし、性能差を加味すると、単純に価格だけでは比較できない点に留意してください。
フェノールフォームは高価ですが、省エネ効果を高めやすいため、光熱費を抑えられます。快適な温度環境で過ごせると、病気が減り、医療費の低減にもつながります。
人工樹脂であるため紫外線や物理的衝撃に弱い
フェノールフォームの主原料は、人工樹脂(プラスチック)です。そのため、紫外線や物理的衝撃に弱いという特徴があります。
▼紫外線に弱い
フェノールフォームなどのプラスチック系断熱材は、あまり紫外線に強くありません。直射日光にさらされたまま放置すると、劣化が早まる傾向があります。
施工後は、できるだけ早く外壁材やシートで覆って、日光に当てないようにする必要があります。保管時も、屋内に置くか、シートで養生するといった対策が求められます。
▼物理的衝撃に弱い
フェノールフォームは、ボード自体の物理的な強度がそれほど高くありません。厚みも35mm程度と薄いため、衝撃によって割れる恐れがあります。
ですから、施工時や搬入時には無理な力をかけないよう注意が必要です。
シロアリの食害に遭う恐れがある
発泡プラスチック系の断熱材は、全般的にシロアリに食害される可能性があります。
シロアリは、断熱材を主食とするわけではありません。しかし、巣作りの際に発泡樹脂をかじって通り道(蟻道)をつくったり、食べかすを餌にしたりするケースがあります。
そのため、床下や壁内にフェノールフォームを使う場合は、事前に防蟻処理を施した製品を選ぶか、防蟻措置をおこなう必要があります。
フェノールフォームならではのメリット
つづいて、フェノールフォームならではのメリットをご紹介します。
- 断熱性が高い
- 経年劣化が少ない
- 難燃性・耐水性に優れている
それぞれ、詳しく解説します。
断熱性が高い
繰り返しになりますが、フェノールフォームは熱伝導率が極めて低く、断熱性が非常に高い素材です。家の断熱材にフェノールフォームを使うことで、効率よく省エネ性を向上できます。
熱伝導率は、物質の熱の伝えやすさを示す値です。この値が小さいほど「断熱性能が高い」と言えます。
フェノールフォームの代表的な製品の熱伝導率は、おおむね「0.019~0.021W/m・K」程度です。これは、現在実用化されている断熱材の中ではトップクラスの数値です。
他の代表的な断熱材と比較すると、以下のようになります (目安であり、製品や施工状況によって異なる)。
- グラスウール:約0.05~0.03
- ロックウール:約0.05~0.03
- セルローズファイバー:約0.04~0.035
- インシュレーションファイバー:約0.05~0.035
- ポリスチレンフォーム (押出法):約0.04~0.022以下
- ポリスチレンフォーム (ビーズ法):約0.03~0.045
- 硬質ウレタンフォーム:約0.035~0.022以下
- 硬質ウレタンフォーム (吹き付け):約0.04~0.023
- フェノールフォーム:約0.04~0.022以下
このように、フェノールフォームは他の断熱材と比較しても熱伝導率が低く、同じ厚さであればより高い断熱効果を発揮できます。
そのため、壁の厚さを抑えたい場合や、より高い断熱性能を求める場合に非常に有効な選択肢となります。
経年劣化が少ない
「断熱性能は時間とともに落ちるもの」⸺ そう思っていませんか?
フェノールフォームは、時を重ねても性能がほとんど変わりません。長く住む家にふさわしい選択肢と言えます。
▼経年劣化が少ない理由
フェノールフォームの経年劣化が少ない理由は、以下のとおりです。
- 素材が化学的に安定している
- 微細な独立気泡構造をしている
- 吸湿・吸水性が低い
フェノール樹脂は、熱によって硬化する樹脂です。硬化後は化学的に非常に安定した構造となり、熱や化学物質による変質や分解が起こりにくくなります。
フェノールフォームの内部は、非常に細かい独立気泡で構成されています。この構造によって、気泡内の断熱ガスの漏れを防ぎ、断熱性能の低下を抑えることができます。
また、フェノールフォームは吸湿性・吸水性が低い素材です。そのため、水分による断熱性能の低下や、素材の劣化を防ぐ効果もあります。
▼他の断熱材との比較
他の断熱材と比較した場合、フェノールフォームはどの程度経年劣化が少ないのでしょうか?
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、50mm厚の発泡プラスチック系断熱材が25年間でどのくらい劣化するのか調査し、報告書にまとめています。
この報告書(断熱材の長期断熱性能評価に関する標準化調査成果報告書)では、各種断熱材の経年劣化を加味した熱伝導率の補正係数が示されています。
補正係数は、1に近いほど「経年劣化が少ない」ことを意味します。主な断熱材の補正係数をご紹介しましょう。
- ポリエチレンフォーム:0.99
- ビーズ法ポリスチレンフォーム:0.98
- フェノールフォーム:0.92
- 押出法ポリスチレンフォーム:0.88
- 硬質ウレタンフォーム:0.81
- 吹付硬質ウレタンフォーム (現場発泡):0.75
ポリエチレンフォームやビーズ法ポリスチレンフォームは、経年劣化が非常に少ない断熱材です。しかし、断熱性(熱伝導率)ではフェノールフォームに劣ります。
一方、硬質ウレタンフォームは優れた断熱性を持っています。しかし、フェノールフォームと比較して、経年での性能低下率がやや大きい結果となっています。
つまり、フェノールフォームは「断熱性と長期安定性のバランスがよい断熱材」と言えます。
難燃性・耐水性に優れている
フェノールフォームは、難燃性と耐水性も優れています。
▼難燃性について
先述のとおり、フェノールフォームの原料であるフェノール樹脂は、熱硬化性樹脂の一種です。熱硬化性樹脂は、熱を加えると硬化し、再び熱を加えても軟化・溶融しにくいという特徴があります。
フェノールフォームは火にさらされると、表面が炭化します。この炭化層が延焼を遅らせる働きをします。さらに、多くの製品には、火源がなくなると自然に燃焼が止まる自己消火性があります。
また、燃焼時に発生する煙や有毒ガスが少ない点も特長です。これらの性質によって、フェノールフォームは避難時の安全性を高める断熱材として評価されています。
一方、ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームは燃焼しやすい素材です。そのため、難燃処理を施している製品が少なくありません。
▼耐水性について
フェノールフォームは吸水しにくく、湿気などの水分を通しにくいという特徴があります。そのため、結露による断熱性能の低下や素材の劣化を防ぎやすい素材です。
ただし、施工方法によっては、長期間使用するとわずかながら吸湿する可能性があります。とくに《カット面》は比較的吸水しやすい可能性がありますので、適切な配慮が必要です。
まとめ:フェノールフォームの特徴を理解して後悔のない断熱材選びを
フェノールフォームは、非常に優れた断熱性能を持っています。高性能住宅や省エネ住宅を目指す方には、非常に頼もしい存在と言えるでしょう。
一方、価格や紫外線への配慮、シロアリ対策といった注意点もあります。これらを理解し、適切な施工・管理をおこなえば、フェノールフォームのメリットを最大限に生かせます。
断熱材は、一度家が建ってしまうと簡単には変えられません。性能やコスト、暮らし方をトータルで見極めながら、あなたの住まいに最適な選択をしたいですね。