吹き付け断熱は後悔する?知っておきたいデメリットと対策を紹介

吹き付け断熱は後悔する?知っておきたいデメリットと対策を紹介

硬質ウレタンフォームの吹き付け断熱は、断熱性や気密性、遮音性などを向上させる魅力的な断熱手法です。しかし「採用すると、後悔する?」と不安を感じている方が少なくありません。

じつは、吹き付け断熱には「高価、シロアリ被害、リフォーム時の扱いが難しい」などの懸念があります。また、性能や効果が施工技術に左右されやすく、業者選びで失敗するケースもあります。

本稿では、吹き付け断熱の特徴メリット、そしてデメリットと対処法を丁寧に解説します。断熱材選びに役立つ情報ですので、採用を決める前にぜひチェックしてください。

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吹き付け断熱とは

吹き付け断熱とは

吹き付け断熱は、断熱材の原材料を壁や床下、天井裏などに直接吹き付けて現場で発泡させる断熱方法です。

一般的にはポリウレタン(以下、ウレタン)樹脂系の発泡材(フォーム)を用いるため「発泡ウレタン断熱」とも呼ばれます。

吹き付け断熱の特徴

吹き付け断熱の仕組みを大まかにご紹介すると、以下のようになります。

  1. 原材料を施工箇所に吹き付ける
  2. 化学反応で泡状に膨らんで固まる
  3. 周囲の下地材に強力に密着する

硬化した断熱材には、無数の微細な気泡が閉じ込められています。その気泡が空気やガスを大量に含んでいるため、熱を伝えにくい構造となり、高い断熱性能を発揮します。

発泡スチロールの保温箱を想像していただくと、わかりやすいでしょう。発泡スチロールも多くの空気を含んでいますので、断熱効果が高く、中の温度を長時間維持できます。

なお、発泡したウレタンは壁の中の細かな隙間まで埋め尽くすため、断熱と同時に高い気密性も確保できます。その点も、特筆すべき特徴と言えます。

他の断熱材との比較

吹き付け断熱で使われる硬質ウレタンフォームと他の断熱材には、どんな違いがあるのでしょうか?

まず、断熱材にはさまざまな種類があり、大別すると繊維系発泡樹脂(プラスチック)系に分けられます。

繊維系 ・グラスウール
・ロックウール
・セルローズファイバー
・インシュレーションファイバー
など
発泡樹脂系 ・ポリスチレンフォーム
・硬質ウレタンフォーム
・フェノールフォーム
など

繊維系の断熱材は柔らかいため、外壁の中に詰める《充填断熱》に用いられます。一方、発泡樹脂系は硬いため、ボード状のものを外壁の外側に張る《外張り断熱》で用いることが多いです。

硬質ウレタンフォームについては、ボード状のものは主に外張り断熱に、吹き付けるものは充填断熱に用いられます。

断熱性能の違い

吹き付け硬質ウレタンフォームは、主要な断熱材の中でトップクラスの断熱性能を持っています。

熱の伝わりやすさを表わす「熱伝導率 (単位:W/m・K)」で比較してみましょう。熱伝導率が低い断熱材ほど、熱を通しません。

  • グラスウール:約0.05~0.03
  • ロックウール:約0.05~0.03
  • セルローズファイバー:約0.04~0.035
  • インシュレーションファイバー:約0.05~0.035
  • ポリスチレンフォーム (押出法):約0.04~0.022以下
  • ポリスチレンフォーム (ビーズ法):約0.03~0.045
  • 硬質ウレタンフォーム:約0.035~0.022以下
  • 硬質ウレタンフォーム (吹き付け):約0.04~0.023
  • フェノールフォーム:約0.04~0.022以下

こうして比較してみると、硬質ウレタンフォームが優秀な断熱材であることがわかります。異なる断熱材で同じ断熱性能を得たい場合、熱伝導率の低い断熱材ほど薄くできます。

参考:国土交通省「断熱材の種類の例」

また、先述のとおり吹き付け断熱は構造の隙間を埋めやすく、断熱材の継目や欠損を生じにくい工法です。そのため、カタログ値どおりの性能を発揮しやすい点もメリットと言えるでしょう。

費用の違い

各種断熱材の中で、吹き付けウレタンフォームは費用単価が高い部類に入ります。吹き付け材そのものの材料費に加え、機材運搬や施工手間などの工賃が高額になる傾向があります。

断熱材の価格は、それぞれ施工方法が異なるため一概に材料費だけで比較できません。目安として、工賃等もプラスしたうえで安価な順に並べると、おおむね以下のようになります。

  • グラスウール
  • ロックウール
  • ポリスチレンフォーム
  • インシュレーションファイバー
  • 硬質ウレタンフォーム
  • フェノールフォーム
  • セルローズファイバー

断熱材のコストを考えるときは、初期費用だけでなく、ライフサイクルコストや補助制度も考慮する必要があります。

たとえば硬質ウレタンフォームやフェノールフォームは性能が高く、快適に暮らせるため、冷暖房費や医療費の削減が期待できます。長期的には、コストアップを相殺できる可能性があります。

断熱性能を高めた家は、省エネ住宅向けの補助金制度や減税措置を利用できるケースもあります。

耐久性の違い

耐久性の面から見ると、繊維系より発泡樹脂系の断熱材のほうが有利です。繊維系の断熱材は、沈下や垂れ下がりによる性能低下のリスクがあります。

表にして比較してみましょう。

材料名 耐久性 特徴・劣化リスク
グラスウール 湿気を吸うと性能低下。施工ミスや結露で垂れ下がりやすい。長期維持には防湿対策が必須。
ロックウール グラスウールより湿気にやや強いが、湿潤環境だと徐々に沈下・密度減少リスクあり。
セルローズファイバー 吸放湿性があり湿気に馴染むが、重みで沈下することがある。ホウ酸添加で防蟻可能。
インシュレーションファイバー セルローズファイバーよりやや沈下しにくい。乾燥環境下ではより安定。
ポリスチレンフォーム 水を吸いにくく、形状も安定。ただし高温多湿環境下では収縮や劣化リスクがある。
硬質ウレタンフォーム 高い形状安定性。劣化も少ない。硬化後の収縮や沈下はほぼなし。防蟻仕様を選ぶと安心。
フェノールフォーム 湿気に強く、50年以上性能を維持可能と言われる。耐火性もあり、トップクラスの長期安定性。

吹き付け硬質ウレタンフォームは、一度硬化すると構造体に貼り付きます。繊維系断熱材のように自重で経年沈下(ずり落ち)する心配が少なく、長期間にわたり断熱性能を維持しやすいです。

ただし木造住宅では、経年で木材が収縮した際に発泡ウレタンとの間に隙間ができるリスクが指摘されています。この点は、耐久性上の課題と言えます。

一方、繊維系断熱材は、施工不良があると経年で性能ムラが出る点に注意が必要です。湿気により断熱性能が低下したり、乾燥と振動で隙間ができたりする可能性もあります。

発泡樹脂ボード系の断熱材は、基本的に性能が長持ちします。ただし、シロアリ被害や高温環境での劣化、発泡ガスの抜けによる断熱性能の微低下などを起こすことがあります。

デメリット:吹き付け断熱の後悔・失敗しやすいポイントと対策

吹き付け断熱の後悔・失敗しやすいポイントと対策

どんな断熱材にも短所はあるため、事前にそれを把握して適切な対策を講じることが大切です。

吹き付け断熱にも、多くのメリットがある反面、採用にあたって知っておくべきデメリット(注意点)もあります。

代表的なものをご紹介しましょう。

  • 施工費用が一般的な断熱材と比較して高め
  • 施工技術によって性能・効果が左右される
  • リフォームや解体時の扱いが難しい
  • 地震や木材の乾燥収縮で隙間ができる恐れがある
  • シロアリ被害を受ける可能性がある

それぞれ、詳しく解説します。

施工費用が一般的な断熱材と比較して高め

吹き付けウレタン断熱は、他の断熱材に比べ初期コストが高めです。そのため、新築や断熱改修など、施工範囲が広い工事ほど費用負担が増えます。

ただし、断熱材の施工コストに関しては、高断熱化による光熱費削減効果や医療費低減効果、補助金制度を考慮してライフサイクルコストで判断することが重要です。

医療費低減効果については、以下の記事で詳しく解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。

寒い家はボケるって本当?室温と脳の老化の関係とは

とくに、構造が複雑で施工面積が広い住宅では、費用が高額になりがちです。事前に複数社から見積もりを取り比較検討する等のコスト対策を実施しましょう。

予算的に厳しい場合は、たとえば「壁は吹き付け断熱+天井は安価な繊維系断熱」といった組み合わせ施工も検討できます (ただし、断熱方式を混在させる場合は結露防止措置など専門的配慮が必要)。

費用に見合う効果が得られるよう、家全体の断熱計画を最適化しましょう。

施工技術によって性能・効果が左右される

吹き付け断熱は、現場発泡ゆえに、施工の良し悪しが断熱性能に直結します。経験の浅い人が施工すると、発泡の厚みにムラができたり、充填の欠損箇所が生じたりする恐れがあります。

断熱材のムラや欠損は、断熱・防音効果の低下を招きます。そのような品質不良を避けるには、信頼できる業者選びと施工品質の確認が何より大切です。

依頼前に施工会社の実績を確認し、施工事例や顧客の評判をチェックしましょう。可能であれば施工時に立ち会うか、施工後に重要部位の厚みや発泡状況を報告してもらい確認するとよいでしょう。

リフォームや解体時の扱いが難しい

施工後の吹き付けウレタンフォームは、剥がして再利用することができません固着している木材等も再資源化(リサイクル)できず、解体時の廃棄物処理費用がかさむ要因になり得ます。

将来的にリフォームする計画がある場合は、それも見据えて断熱材を選定することが重要です。あとで間取りを変更しそうな部分だけ、あえてボード状断熱材を使うなどの工夫も一案です。

一度施工した吹き付け断熱は「外せないもの」と心得て、将来の変更が少ない箇所に優先採用するほうが無難です。

地震や木材の乾燥収縮で隙間ができる恐れがある

木造住宅で吹き付け断熱を採用した場合、施工直後は柱や梁などの構造材に発泡ウレタンが密着しています。しかし、時間の経過とともに隙間が生じることがあります。

これは、木材が乾燥すると縮むため起きてしまう現象です。大地震で建物が揺れて歪んだ際、発泡ウレタンが構造材から部分的に剥離するケースもあります。

隙間ができるとその部分の断熱・気密性能が落ちてしまい、結露や省エネ性の低下につながりかねません。このリスクを減らすには、以下のような対策が有効です。

  • 柔軟性が高く、構造材の動きに追従できる発泡ウレタンを選ぶ
  • 柱や梁など構造材の含水率を十分下げておく(乾燥材を用いる)

発泡ウレタンの中には、柔軟性(追従性)を高めた製品もあります。商品選定時に比較検討してみるとよいでしょう。

また、施工前に柱や梁などの構造材の含水率をしっかり下げておくことで、施工後の収縮を最小限にできます。

シロアリ被害を受ける可能性がある

発泡ウレタンはシロアリのエサになりにくく、食害を受ける可能性の低い素材です。しかし、シロアリの通り道(蟻道)になる可能性がある点は注意すべきでしょう。

吹き付け断熱材の下をシロアリが進行し構造材に食害が発生した場合、外からはわかりにくく、被害を拡大させてしまうケースがあります。

シロアリ被害が進行すると、木材の強度低下や腐朽にもつながり、建物の耐久性に深刻な影響を及ぼします。ですから、防蟻対策の徹底と定期点検が不可欠です。

メリット:吹き付け断熱ならではの魅力・長所とは

吹き付け断熱ならではの魅力・長所とは

次に、吹き付け断熱を採用することで得られる主なメリットをご紹介します。

  • 断熱性と気密性に優れている
  • 壁体内結露の抑制と住宅の耐久性向上が期待できる
  • 優れた接着力により断熱性能を維持できる
  • 音を遮断する効果(遮音性能)が向上する

順番に詳しく解説します。

断熱性と気密性に優れている

吹き付けウレタンフォームは、内部に無数の細かい気泡を含み空気を封じ込めることで、非常に高い断熱性を実現しています。同じ厚みで比べれば、グラスウールより高い断熱効果を発揮します。

加えて、現場吹き付け時に発泡しながら下地に密着してくれます。窓枠周りやコンセントボックス周辺といった細部にも隙間なく充填でき、同時に高い気密性も確保できます。

気密性が高まると、外気の侵入や室内空気の漏出が減り、冷暖房効率がアップします。その結果、室内温度を一定に保ちやすくなり、一年を通して快適で省エネな暮らしができるようになります。

壁体内結露の抑制と住宅の耐久性向上が期待できる

室内の湿った空気が壁の中に侵入して冷やされると、結露を生じてしまいます。吹き付け断熱で気密性を高めれば、湿気の侵入量が少なくなり、結露が発生しにくくなります。

また、吹き付けウレタンは独立気泡構造(泡がひとつずつ閉じている)であるため、水蒸気の通過を抑える効果もあります。その結果、壁内に湿気がたまるのも抑制できます。

壁内で結露が起こらなければ、構造材が濡れて腐る心配が減り、住まいの耐久性向上につながります。カビや木材腐朽菌、シロアリの発生リスクも減らせるでしょう。

優れた付着力により断熱性能を維持できる

発泡ウレタンは、下地への付着力が非常に高い素材です。施工後に重力で垂れ下がったり経年でずり落ちたりする心配がほぼなく、施工直後の断熱性・気密性を長期間維持できます。

また、発泡ウレタンは複雑な形状の空間にも密着充填できるため、他の断熱材では施工が難しい部分でも断熱欠損を防げます。非常に安心感のある断熱材と言えるでしょう。

ただし、先述のとおり木材の収縮や地震によって、剥離することも考えられます。木材収縮や地震の対策をしっかり講じることが大切です。

音を遮断する効果(遮音性能)が向上する

吹き付け断熱は高い気密性を確保できるため、空気の抜け道が少なくなります。音の一部は空気の振動によって伝わりますので、隙間をなくすことで音漏れを抑えられます。

また、吹き付けウレタンは内部に無数の細かい独立気泡を持っています。この気泡が音のエネルギーを吸収したり散乱させたりするため、壁を通過する音が減衰します。

たとえば、車の通行音や飛行機の音、隣家の生活音などを抑制できるでしょう。一方、壁や床を伝わる《個体電波音》は、吹き付け断熱では防げません。別途、対策が必要です。

まとめ:吹き付け断熱は目的によって向き不向きがある

吹き付け断熱は、高気密・高断熱住宅を目指す方形状が複雑な家を建てる方外部の騒音を遮断したい方には非常に大きなメリットをもたらしてくれます。

一方で、初期費用をできるだけ抑えたい方や、将来的なリフォームを見据えている方、シロアリ対策を重視する方は慎重な検討が必要です。

大切なのは、吹き付け断熱の特性を正しく理解し、自分たちの希望や住まい方に合っているかを見極めること。本稿が、後悔のない断熱材選びの一助になれば幸いです。

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